光線力学的療法(PDT)について
1.光線力学的療法(PDT)とは
光線力学的療法とはレーザーを使った治療法の一つで、別名PDTと呼ばれています。PDTとは「photodynamic therapy」の略で、レーザーの中でも高温で組織を焼き切るというレーザー治療法とは異なり、医薬品である光感受性物質(ひかりかんじゅせいぶっしつ)と低出力のレーザー照射を組み合わせることによって、腫瘍や新生血管を壊死、縮小させる治療法のことを言います。
この治療法は世界に先駆けて日本で開発された治療法で、1994年に当時の厚生省から承認され、1996年に中心型早期肺がんに対して保険適用されました。
また、ここで言う「低出力のレーザー」とは、一般的に知られているレーザーメスのように熱で組織を焼き切るというものではなく、手をかざしてもほとんど熱さを感じないほど出力の弱いレーザーのことで、このことはPDTで使用するレーザーの特徴の一つであるとも言えます。
また、先に述べたとおり、PDT治療は医薬品である光感受性物質と低出力のレーザー照射を組み合わせることによって行う治療法であり、レーザーのみ、または医薬品のみで治療を行うことは出来ません。
PDT治療は医薬品である光感受性物質に低出力のレーザーを照射することによって起こる化学反応を利用し、現在のがん治療としては肺がん(早期、進行がん)、悪性脳腫瘍、早期食道がん、再発性食道がん、胃がん、早期子宮頸がんに保険が適用されています。
その治療の仕組は、まず腫瘍や新生血管に対して親和性(他の物質と容易に結合する性質や傾向)のある光感受性物質を体内に投与します。
この光感受性物質には腫瘍組織や新生血管に対する特異的な集積性がある為、医薬品投与後に一定時間が経過すると、この腫瘍組織や新生血管に対して選択的に光感受性物質が集積します。
そこへレーザー光を照射することによって光化学反応が引き起こされ、その結果、一重項酸素という活性酸素が発生します。この一重項酸素は強い細胞破壊効果を持っており、この化学反応によって発生する一重項酸素が、選択的に集積していた光感受性物質周辺の細胞だけを変性し、壊死、縮小させると考えられています。
また、この一重項酸素の寿命は短い為、その分散範囲は狭く、光感受性物質とレーザー光の化学反応によって発生した一重項酸素は、腫瘍組織や新生血管に対してピンポイントに作用することができ、正常な組織に対しては大きな障害を与えないということが最大の特徴です。
つまりPDTは機能温存を考慮した侵襲の少ない治療法であり、治療を受ける患者さんの体への負担が少ない為、がん治療においては、今後高齢者に対する治療方法の一つとして一層期待が高まっています。
2.PDT治療の手順
- ①腫瘍や新生血管に対して親和性のある光感受性物質を静脈注射します。この物質はがん細胞や新生血管に集まる性質を持っています。
- ②一定時間(4~6時間)経過後、光感受性物質が集積した病変部に対して低出力のレーザー照射を行います。
- ③病変部に集積した光感受性物質にレーザー照射を行うことで化学反応が起こり、一重項酸素が発生して病変細胞のみを壊死、縮小させます。
3.PDTを利用した治療
現在PDT治療は、がん治療としては肺がん(早期、進行がん)、悪性脳腫瘍、早期食道がん、再発性食道がん、胃がん、早期子宮頸がんに対して保険が適応されており、がん治療以外にも眼底疾患における新生血管に対してPDT治療が行われております。
肺がんに対するPDTについて
1.肺がんに対する現在のPDT治療
現在、早期非小細胞肺がんの治療法の第一選択は、外科切除(手術)とされていますが、多発重複がんの発生があることや、肺がん患者の中には元々呼吸器機能が低下している患者さんが多いことから、近年では呼吸機能の温存を図る治療法がとても重要視されてきています。
また、肺がんは大きく分けると、病変部位によって、気管支鏡で確認ができる「中心型」と気管支鏡で確認ができない「末梢型」に分類することができますが、早期肺がんの中でも「中心型」に分類されるがんに対しては米国NCI(アメリカ国立がん研究所)でも治療法としてPDTが推奨され、日本においても日本肺癌学会のガイドライン上で「勧められる」治療法として推奨されています。
元々、中心型早期肺がんという判断基準は、1975年に池田茂人先生によって提唱されたものですが、当時はほとんどの患者さんが咳や痰(いわゆる「血の混じった痰」)などの症状を有しており、この中心型に分類される早期肺がんとは、腫瘍が区域気管支より中枢に位置し、気管支粘膜、粘膜下層に限局して、転移をしていない状態を指しています。
今現在、PDT治療を行える肺がんは、この「中心型早期肺がん」のみですが、実際、PDTを施行する場合には、内視鏡での確認で早期肺がんと診断できても、さらに腫瘍径が1cm以下であること、また腫瘍の末梢辺縁(腫瘍全体の形)が内視鏡で確認できることがとても重要となります。
腫瘍径が1cm以下の病巣に対するPDTの完全奏効率(治療効果の指標のことで、がん細胞が消失したことを示す確率)は95%ですが、逆に1cm以上の病巣に対しては65%と明らかな差異が認められ、腫瘍の末梢辺縁が確認できないような病巣においては、たとえ完全奏効率を得られたとしても、高頻度での再発が認められています。
2.小型末梢型肺がんに対するPDT治療
前項で述べたとおり、早期肺がんの中でも「中心型」に分類される腫瘍については、ケースによってPDT治療を行うことができますが、同じ早期肺がんの中でも「末梢型」に分類される腫瘍に対しては、今までの間、PDT治療を行うことができませんでした。
ただし近年、CT検診の普及に伴って、このような小型の末梢型早期肺がんの発見率が増加しており、現時点ではこのような肺がん症例に対して、標準術式となっている肺葉切除が施行されるケースがほとんどとなっている中、今後は高齢者肺癌の著しい増加が予測される為、低肺機能によって切除不可能な症例の増加や、QOL(「Quality of Life」の略で生活の質という意味)を考慮した低侵襲治療の要望などが増えていくものと予想されています。
3.術前PDTによる縮小手術の効果
世の中の高齢化に伴って、低肺機能の肺がん症例が増加している中で、手術における肺の切除範囲を縮小する為にもPDTが大きく貢献しています。
がんの病巣範囲が主気管支や気管にまで及ぶような進行肺がんに対して、肺機能の温存や、術後のQOLを考慮し、本来であれば肺の全摘出が必要な症例に対して、先にPDTを行うことによって、肺葉切除のみに留めることを可能にしてきました。
また、進行肺がんで標準的な肺葉切除が必要な病巣と、中心型肺がんの多発病巣を有する症例の場合、PDTと手術を併用した治療によって、これまでに良好な成績をおさめてきました。
4.PDTの適応拡大について
現在日本では、進行肺がんによる気道狭窄に対して、PDTは保険認可されていません。しかし、欧米においてPDTは進行肺がんに対する姑息的治療(対象疾患の根治を目的とするのではなく、症状の軽減や苦痛の緩和などを目的として行われる治療)として確立され、米国ではUS-FDA(「アメリカ食品医薬品局」日本で言う厚生労働省に似た役割を持っているアメリカの政府機関)のPDTの認可も進行癌が先行されています。
また進行肺がんに対する治療法としてPDTとNd-YAGレーザー(従来より、医療用レーザーとして最も多く用いられているレーザー)による比較は多数報告されておりますが、その結果として、再狭窄までの期間、生存期間ともにPDTが優っていることが既に確認されています。
5.早期肺がんに対するPDTの安全使用について
医療の分野では、レーザーの優れた集光性や波長特異性を利用して、手術用のレーザーをはじめとした様々なレーザー装置が開発、使用されておりますが、そのレーザーの使用方法を誤ってしまった場合、患者さんに対して重大な障害を与える危険性が高い為、このようなレーザー装置に関しては、事故防止の為の安全使用を常に心がける必要があります。
そこで、日本光線力学学会と日本レーザー医学会において「早期肺がんを対象としたPDT施行の安全ガイドライン」を定め、現在ではその適正使用と安全確保が十分に図られるようになっています。
肺がんについて
1.肺の機能と仕組みについて
まず、肺がんについて知っていただく前に、肺そのものの機能と仕組みについて簡単に説明をします。ご存じの通り、肺は左右で一対の臓器となっており、それぞれ右肺(イラストでは左側の肺)は3つの肺葉、左肺(イラストでは右側の肺)は2つの肺葉に分かれています。
また、右肺は上から「上葉、中葉、下葉」。左肺は上から「上葉、下葉」と、それぞれ分かれた構造になっており、この左右の肺(右肺と左肺)を隔てる部分のことを縦隔(じゅうかく)と呼んでいます。
また、口から取り込んだ酸素の通り道となる気管は、右肺と左肺の境目(肺の入り口)付近で枝分かれし、気管支となって左右それぞれの肺の奥へと向かって行きます。
さらにこの気管支は肺の奥へ向かって行く過程の中で複数の枝分かれを繰り返し、奥に進むにつれて、その形状は次第に細くなっていきます。
そして、最終的にこの気管支の先端には、ぶどうの房のように小さな袋状の形をした肺胞と呼ばれる部分が存在します。
人は肺の中でも、この肺胞と呼ばれる部分の働きによって、体内に取り込んだ酸素と二酸化炭素を交換し、呼吸機能を維持しているのです。
2.肺がんの基礎知識と、その種類について
Ⅰ)肺がん発症の原因とその確率
肺がんは、気管や気管支、肺胞などの細胞が何らかの原因でがん化したもので、その主な原因としては「喫煙」が考えられます。ただし、中には喫煙と関係性の低い肺がんも存在し、直接タバコを吸わない受動喫煙が原因となる場合など、非喫煙者であっても発症してしまうケースがあることが分かっています。
さらに肺は、全身の血流の中心でもあり、大きな血管が幾つも集まっている臓器でもあります。そのことから肺がんは、血管やリンパ管、気道などを通じて他の臓器への転移が起こりやすい病気であると言われています。
また近年、日本では2人に1人の割合でがんを発症し、3人に1人はがんで亡くなっている
とも言われています。その内、肺がんを発症する確率及び、肺がん発症後の死亡率は共に増加傾向となっており、肺がんは、がんの中でも死亡率が高い病気であると言えます。
Ⅱ)発症後の症状と早期発見の為の対策
残念ながら肺がんについては、発症後に決定的と言えるような確実な症状はありません。咳や痰、発熱や動悸、息苦しさや胸痛など、確認できる症状はいずれも肺がん以外の呼吸器疾患にも見受けられる為、肺がんとの区別がつきにくく、目立った症状が出ないまま、気付かない内に症状が進行してしまうケースが数多く存在します。
また、発症早期にはこういった自覚症状がほとんどみられない為、肺がんである可能性が比較的高い血痰(「けったん」血の混じった痰)といった自覚症状がきっかけとなって発見された肺がんなどは、発見された時点で、その病状はかなり進行しており、既に根治が難しくなっている場合が多いのです。
このように肺がんは、発見がしづらく、発見できた時には既に病状が進行しているケースが多いことから、がんの中でも治りにくい病気であると言われています。
こうしたことから肺がんは、いかに早期の内に発見できるかどうかが、非常に重要なポイントとなっています。確かに肺がんは発見しづらい病気ではりますが、逆に考えれば、早期発見が可能となれば、十分に根治する可能性も高くなると考えられるわけです。
その対策として最も有効とされているのが定期的な「検診」です。実際、日本では、健康診断などで行ったX線検査やCT検査によって、偶然肺がんが発見されるケースが最も多いとされています。
そんな検診の中でも、肺がんに関する検査としては、大きく分けて「画像検査」と「病理検査」の2つがあり、この内、画像検査は「胸部X線検査」や「胸部CT検査」など、画像によって腫瘍自体を発見したり、腫瘍の大きさ(広がり)などを調べたりします。
一方、病理検査とは「気管支鏡検査」や「喀痰細胞診(「かくたんさいぼうしん」痰によってがん細胞の有無を調べる方法)」など、検査によって採取した細胞や組織そのものを調べることで、その細胞や組織が本当にがんなのかどうか、がんであった場合は、どのような種類なのかを診断する為の検査です。
Ⅲ)肺がんの種類
最終的に肺がんの種類を特定する為には病理検査が必要となりますが、肺がんはその種類と発生場所によって、その後の治療方針が大きく異なってくる為、組織別(がん細胞の形や状態)及び部分別(腫瘍が肺のどの場所にあるか)での分類がとても重要となってきます。
まず、肺がんの形状を組織的に分類した場合、大きく分けて「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」の2つに分類することができます。その内、非小細胞肺がんは「腺がん」、「大細胞がん」、「扁平上皮がん(へんぺいじょうひがん)」と、さらに3つに分類することができ、この分類を組織型の分類と呼んでいます。
実際は、これ以外にも特殊な肺がんが数種類存在しますが、それらはごく稀で、肺がんのほとんどは、この腺がん、大細胞がん、扁平上皮がん、小細胞肺がんの4種類で占められています。
次に肺の中でも、がんが発生する部分(場所や部位)によって、その種類を大きく2つに分類することができます。ひとつは肺の入り口付近で、大きく太い気管支にできる中心型(肺門型)と、もうひとつは肺の気管支の中でも奥の方(細い部分)にできる末梢型(肺野型)です。
Ⅳ)肺がんの種類ごとに異なる特徴
日本人の肺がんの中で最も多いのは腺がんで、その発症率は男性より女性の方が多いとされています。また、腺がんは肺の末梢部に発生することが多く、その進行の度合いは中等度と言われています。
次に多いとされているのが扁平上皮がんで、扁平上皮がんは喫煙との因果関係が強く、腺がんとは逆に男性の発症率が高いとされています。また、発生する場所も肺の中心部が多く、その進行度合いは比較的遅いとされています。
一方、小細胞肺がんは、肺がんの中でも発症率が低く、扁平上皮がん同様に喫煙によって発症に至るケースが多いことから、発症する人の割合は中高年の男性が多いと言われています。
尚、この小細胞肺がんは進行と転移の度合いが非常に早く、リンパ節やその他の臓器に転移しやすい、悪性度の高いがんと言われています。また、大細胞がんは、発症の割合が肺がんの中でも最も低く、主に肺の末梢部に発生し、その進行度合いは比較的早いと言われています。
肺がん | |||
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【‐肺がんの組織型分類‐】 | |||
非小細胞肺がん | 小細胞 肺がん |
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腺がん | 大細胞がん | 扁平上皮がん | |
【‐肺がんの部分型分類‐】 | |||
主に末梢型 (肺野型) |
主に中心型 (肺門型) |
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【‐進行と転移の度合い‐】 | |||
中等度 | 早い | 遅い | 最も 早い |
【‐肺がんの中での割合‐】 | |||
約60%程度 | およそ10%未満 | 約20%程度 | 約10~15%程度 |
【‐それぞれの主な特徴‐】 | |||
日本人の肺がんの中で最も多い。 女性に多く、ほとんどが末梢型。 |
肺がんの中でも発症数が少ない。 | 咳や血痰などの症状が現れやすい。 喫煙との関連が大きく、男性に多い。 |
中高年の男性に多い。 喫煙との関連が大きい。 |
3.肺がんの病期について
肺がんの病期(進行度合)は一般的に「ステージ」という言葉で表現でされることが多く、皆さまも一度は耳にしたことがあるのではないかと思います。肺がんの場合は、「早期」の状態から、がんの進行度合いによって0期~Ⅳ期に分類することができます。
また、肺がんの病期はTNMという3種類の組み合わせによって、その分類が決まっており、「T」は原発巣がんの大きさや広がりの程度、「N」は所属リンパ節(胸腔内や鎖骨上部のリンパ節)への転移の有無、「M」は遠隔転移の有無としてそれぞれ判断され、基本的には、この3つの分類(TNM分類)の判断結果から総合的に病期を割り出しています。
この肺がんの病期判断について、とてもシンプルな考えを当てはめた場合、①「がん細胞自体の大きさはどれくらいか?」、②「転移はしていないか?」、③「転移している場合、どこに転移しているか?」の3点がとても重要になると考えられます。
4.肺がんに対する一般的な治療方法
現在、肺がんに対する一般的な治療法としては、大きく分けて「外科治療(手術)」、「放射線治療」、「薬物療法(化学療法)」の3種類があり、この3種類の方法は、肺がんの病期や診断状態など、様々な状況に応じて単独で行ったり、組み合わせて行ったりします。
また、この3種類の治療法の中でも、外科治療と放射線治療の2種類については、腫瘍部分に的を絞って行う「局所療法」であるのに対し、薬物療法は、全身に散らばった可能性のあるがん細胞に対して、広域的に行う「全身療法」であると言えます。
尚、先に述べた肺がんに対する3種類の治療法を組み合わせて行う場合は、この局所療法と全身療法を組み合わせるのが一般的です。
Ⅰ)外科治療(手術)
外科治療とは、一般的に言う腫瘍切除(いわゆる手術)のことで、患者さんの年齢や肺がんの病期などによって、その切除が行える場合と、そうでない場合があります。
また、その方法は腫瘍を切除する範囲によって様々で、腫瘍がある肺葉部分のみを丸ごと切除する、標準術式の「肺葉切除」や、腫瘍がある肺葉の中でも、がん細胞がある区域のみを限定して切除する「区域切除」、さらに、その区域の中でも、がん細胞がある部分のみに的を絞って切除をする「楔状切除(けつじょうせつじょ)」などがあります。
さらに、場合によっては右肺と左肺の2つの内、がん細胞が存在している側の片肺を全て切除する「片側肺全摘」という方法もあり、どの方法を選択して手術を行うかは、その肺がんの病期や患者さんの状態などに大きく関係しています。
Ⅱ)放射線治療
放射線治療には大きく分けて、最終的な根治を目的とした「根治的な放射線治療」と、根治ではなく、転移が原因で起こる症状の緩和を目的とした「緩和的な放射線治療」の2種類が存在します。
放射線治療は、患者さんが高齢者の場合や、様々な医学的理由によって外科治療(手術)ができない場合などに行われる治療法で、根治的な選択をするのか、緩和的な選択をするのかについては、その肺がんの病期や診断状況によって都度異なる為、それぞれの状況に応じて、医師が適切な判断を行っています。
Ⅲ)薬物療法(化学療法)
薬物療法とは、がんの増殖を抑えたり、がんの成長を遅らせる効果のある薬剤を点滴や内服などで体内に取り入れて、広域的にがん治療を行う全身療法のことを言います。
ここで使用される薬剤は、体内に入ると全身をくまなくめぐる為、転移しやすい肺がんにとっては、肺以外の臓器に転移したがん細胞に対しても、その効果を期待できるという反面、がん細胞以外の正常な細胞に対しても悪影響を与えてしまうという欠点もあります。
また、薬剤の中には、一般的には「抗がん剤」として有名な「細胞障害性抗がん薬」や「分子標的薬」、「免疫チェックポイント阻害薬」などがあり、これらの薬剤の中から、その肺がんの病期や診断状況に応じて、適切な薬剤を選択して治療を行います。
PDT治療のメリットとデメリット
PDT治療を行う上での最大のメリットは、病変部位のみに限定した、ピンポイントでの治療が可能なことです。
その為、正常な細胞を傷付けるリスクが少ないという利点が生まれ、このことによって、患者さんの体への負担が大幅に軽減されるだけでなく、肺機能そのものを温存しながら治療を行うことができる為、加齢によって体力や肺機能が低下している高齢者や、様々な医学的理由によって外科切除(手術)や放射線治療ができない場合においても、PDT治療を選択することが可能になっているのです。
一方、PDT治療を行う上でのデメリットとして光線過敏反応が挙げられます。PDT治療では、施行前に投与する医薬品として光感受性物質の存在が必要不可欠となりますが、この光感受性物質の欠点として、顔や手などの露出した皮膚にレーザ光以外のひかり(日光など)があたると、化学反応が起こり、その部分が赤くなったり、発疹や水ぶくれなどの光線過敏症を起こすことが知られています。
また、それ以外にPDTは穿孔(「せんこう」臓器などに穴が開いてしまうこと)や出血などの重篤な合併症が少ない半面、その反応に時間を要することが分かっており、PDT施行後は壊死物質及び凝血塊(「ぎょうけっかい」血液のかたまり)等の除去が必要になると考えられています。